色の組み合わせは自分のこころが決めている?
一目刺しの角七宝を刺したときに、糸の色の組み合わせが、あまりにもおかしなものになってしまい、その後いろいろと考えていました。
せっかくのうつくしい模様の良さを活かせないような色の組み合わせをしたいと思っているのに。むしろ、模様の良さを消してしまっているし。
色の組み合わせって、もしかしたら精神状態を表しているのかもしれないなとか、もろもろのことを考えていました。支離滅裂な精神状態というか、なんのために刺しているのかわかっていないというか。
すこし、手仕事の原点に戻ってみようかなぁと思うときに観る番組が、【猫のしっぽ カエルの手】です。HDDに録りためているのを、ピックアップして見返したりするのです。
アイヌ刺繍作家さんの言葉
ふと、【猫のしっぽ カエルの手】の平成28年7月24日に放送された『北の自然に生きる』のなかで、アイヌ刺繍作家でもある女性が語っておられた内容を思い出しました。
たまたま、金曜日の夜中にやっているクレージージャーニーという番組で民族写真家のヨシダナギさんという女性が、アイヌ民族のことについて語っていたのを観た直後というのもあります。この番組もなかなか面白いですね。アイヌの人が鮭の皮でつくる靴は、観ていてとても興味深いものがありました。
話がそれてしまいました。
【猫のしっぽ カエルの手】の『北の自然に生きる』という放送回で、ベニシアさんが北海道の釧路市阿寒を訪ねます。ベニシアさんは、同じイギリス女性のイザベラ・バードという旅行作家が明治11年に北海道のアイヌの人々を訪ねて書いた本を数年前に読み、アイヌの人々の暮らしに関心を持ったのだそうです。
この【猫のしっぽ カエルの手】の『北の自然に生きる』のなかで、アイヌ刺繍作家でもある西田佳代子さんがベニシアさんにアイヌ文様について話される場面が、とても素晴らしいのです。
刺繍をされる方で、この放送を観たことがなければ、ぜひとも視聴されることをおすすめします。
番組のなかで西田さんが、100年以上前につくられたデザインのアイヌ文様を刺繍した着物をベニシアさんに見せながらお話されます。
これが、とにかくもう本当にうっとりするような刺繍なのです。
そして、西田さんが「考え方をいただくのは自然。ぶどうのつるとか、木の葉とか。
色合いとかみんな、わたしの色の先生は自然のなかにある。
同じ黄色でも赤でも全部違う。自然のなかから教えてもらえる」とゆっくりと話されます。
じっくりと聞き入ってしまうこの言葉を、わたしはことあるごとに思い出します。
わたしも常々、色の組み合わせだけでなく、刺し子の模様に合わせるときにイメージする色合いなどは、できるだけ自然のなかから引き出したいと思っています。
でも、最近この暑さで…というのにかまけて、つい引きこもりがちになり、外の自然に目が向かなくなっているような気がします。異常な暑さの日々ですが、すこしでも自然のうつろいなど感じられるような過ごし方をしたいな。
この前に刺した刺し子のようなへんてこりんな色の組み合わせにならないように、イメージ豊かに色合いも考えていきたいものです。
刺繍の文様の意味
番組のなかで、アイヌのアイウシ(棘)という文様を西田さんがベニシアさんに説明されます。
棘は刺さると痛いから悪いものが寄ってこない、だから袖口に刺繍をして悪いものが入らないようにと願いを込めて、着物の袖口や襟に刺繍するのだそう。
いわゆる魔除けの意味で刺繍していたのかな。
日本の刺繍でも背守りという赤ちゃんの産着に刺繍する風習もありますが、刺繍は魔除けの意味合いもふくめて古来からされてきたのでしょう。
アイヌの人々は、アットゥシという木の皮を裂いてつくる織り物を使って着物をつくっていたのだそうです。寒い地方は木綿が手に入りにくく、麻を主に衣類に使ってきたとは知っていましたが、木の皮で織物をつくっていたとは。ベニシアさんも驚いていらっしゃいました。
北海道をたずねたことのないわたしでも、この番組を観ることによって、生きた学びをさせてもらったような気持ちになります。考えるきっかけをもらえるというか。本当は実際に訪ねることが一番なのでしょうが。こうやって追体験することで学ぶということも、立派な学びのひとつだと思います。だから、刺繍をしている方にはぜひ視聴をおススメします。
なにか、ものづくりをしている人たちのなかには、自然をお手本にされている方たちが多いのではないのかな。わたしはまったくの趣味で手芸をやっているけど、自然からいろんなイメージをふくらませたり、ひらめいたりしながら楽しんでいきたいと思います。